櫻の国から

日本列島を桜前線が縦断しております。北限まで到達するのにはあとひと月ほども掛かるのでしょうか。いつか時間が出来たら、西国から五稜郭あたりまで桜花を追いかける旅をしてみたいと願っております。

桜は文学の世界に多く登場します。タイトルに冠したり、物語の一節で描写されたりしているのですが、その意味するところはたいていの場合、『美』『妖艶』『魔性』『幻想』『狂気』の象徴。美しい桜のイメージにしては、ずいぶんと恐ろしげです。でもそれが、意外ではなく腑に落ちるところが面白いと言えましょう。坂口安吾の短編小説「桜の森の満開の下」は、見た目は美しい女の、醜いというよりは得体のしれない残酷さ、主人公の山賊が抱える孤独を抽象的に描き、最後は桜の魔性が人間の狂気を飲み込んで全てを消し去るという、恐ろしくも美しい、不思議な物語です。映画化もされているようですが、これは小説を読んで幻想的な情景を想像してみる方がお勧めです。
現代では、桜は歌謡曲にも歌われているのをよく聞きますが、こちらの方は季節柄から『哀愁』『別離』『儚い』、あるいは『再会』『希望』といった言葉を象徴していることが多く、一転して優しげなイメージですね。

いずれにせよ、桜は時代を超えて、日本人にことさらに愛されてきたということでしょう。慌ただしい毎日を過ごしていると、花がいつ咲いていつ散ったのかさえ気づかない、ということもあるものですが、花見に行く時間が無い時でも、電車の窓から見える桜並木にちょっと目を止めるくらいの余裕は、持っていたいものです。


By Admin|2017年4月10日|2017年,ニュースリリース|


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