絵画の中の鶏

今年は酉年です。

それに合わせるかのように、昨年12月の下旬、一つの発見がありました。

江戸時代後期の浮世絵師として有名な葛飾北斎の肉筆画が見つかったというものです。

その絵は掛軸に描かれた「竹鶏図」というもので、しなやかで、ささくれだった節の質感も写実的な竹を背景に石燈籠の上に活き活きとした二羽の鶏が止まっているという構図の作です。

北斎というと、富嶽三十六景という富士山を様々な構図で描いた風景画が有名であり、北斎は自然のみならず日本人の心の「風景」までも描いています。

その北斎のイメージとは異なって描かれているのが「竹鶏図」です。数々の有名な風景画とは違い、写実性に富んだ作は注目すべきです。特に鶏の姿は声を力強く張り上げ、羽をばたつかせながら、掛軸の中から今にも飛び出してくるかのような躍動感には驚きがあります。

専門家によると、写実的な彩色花鳥画を得意とする南蘋(なんびん)派の特徴が見て取れるようです。

ちなみに、南蘋派は沈南蘋(しんなんびん)の弟子が形成したもので、日本絵画史で有名な伊藤若冲や丸山応挙に多大な影響を与えたとされています。

その中の一人、伊藤若冲は多彩な技法で花鳥風月を描く画家ですが、鶏を描いた作は特に有名です。絵が好きだった若冲は家から出ず、縁側に放し飼いにされていた鶏を描き続けたという逸話があるほどです。

若冲は南蘋派の絵師、鶴亭に影響を受け、描く対象を直接観察し、徹底した写実描写で微細なところまで描き切ることで、緻密な絵を完成させています。鮮烈といった表現が相応しく思える色彩、血沸き肉躍るような姿の鶏、どことなく人間くさく、心温まるような穏やかな鶏、怖いほどの目力を感じさせる鶏、あらゆる表情や姿形を描写するのは若冲の得意とするところです。

鶏が描かれた若冲の代表作としては「紫陽花双鶏図」「向日葵雄鶏図」「南天雄鶏図」「老松白鶏図」「芙蓉双鶏図」「大鶏雌雄図」「群鶏図」といったものがあります。これらは若冲が42歳頃から着手し10年の歳月をかけて完成させた日本美術史の最高傑作と言われています。

若冲の描く鶏は超が付くほど写実的でありますが、完璧の中に垣間見える幻想性や独創性を感じ取れる形態や色彩もそれらの絵に引き込まれる要素ではないでしょうか。

一方の丸山応挙ですが、応挙もまた鶏を描いた作を残しておりますが、そこに描かれる鶏は目が捉えた姿を忠実に、ありのままに描いています。それゆえ、描かれた鶏が逃げ出さないように、長らく画面を金網で覆っていたというエピソードがあるほどです。

日本絵画史を代表する3人の鶏の絵について少々触れてみましたが、日本画のみならず、西洋絵画にも鶏を描いた作品は多くあります。

酉年に因み、鶏をテーマにした様々な絵画に触れてみるのも面白いような気がしました。

 


By Admin|2017年1月10日|2017年,ニュースリリース|


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