困ったワンワン!

子供の頃に、九官鳥を飼っておりました。
幼鳥から育てて良く懐いていたので、毎日のように腕に止まらせたり膝に乗せたりして遊びましたし、
(鳥の)運動不足解消のために室内を飛ばしたりもしていました。
可愛がり過ぎで、鳥にとってはちょっと迷惑なスキンシップも多かったかもしれません。
これが犬や猫であれば尚更のこと、飼い主とベッタリくっついて過ごす時間が長いでしょうね。
知っておくべきは、飼い主と可愛いペットの「濃厚接触」によって、感染症が起きることがある、
ということです。

「オウム病」は、家庭で飼われるオウムやインコの糞や羽毛から、クラミジアという細菌が人に感染
して発症する病気です。
鳥は一般的には無症状ですが、人に感染すると高熱を伴い、インフルエンザのような症状になるそうです。
処置が遅れると肺炎を起こすこともあるそうで、決して侮れません。
鳥の病気でよく騒がれるのは、「鳥インフルエンザ」ですが、こちらは主にカモなどの渡り鳥が保持
するウイルスが原因で、ニワトリが大量死して卵の供給に影響が出たりするのでニュースにはなりますが、人に感染するケースはごくまれだと言います。

犬や猫の口腔内には、「パスツレラ菌」という細菌が当り前に存在していて、これが人にうつると喘息や肺炎などの呼吸器疾患が起こります。
咬まれたり引っ掻かれたりした痕が炎症を起こすこともあるそうです。
重症化すると骨髄炎になることもあるので、傷口はすぐに消毒しましょう。

「狂犬病」は、すべての哺乳類に感染し得る、ウイルス性の感染症です。
視覚、聴覚、触覚などの感覚器官に異常を来し、痙攣を起こす。
脳神経や全身の筋肉の麻痺、最期は呼吸障害を起こして死亡する、とても恐ろしい病気です。
日本では1957年を最後に、発生の報告は無いそうですが、世界の国々では依然として発生しておりますので、ペットには必ずワクチン接種を行って予防することが重要となります。
ちなみに狂犬病は、感染している動物に咬まれると感染しますが、ヒトからヒトへの感染はしないので、爆発的な流行にはならないと見られています。
・・・ただし、狂犬病に感染した人が他の人に噛み付いたら、感染するかもしれません(←解説書に
そう書いてある)。

さて、とかく心配されるのは、上述のような動物からヒトへうつる感染症でありますが、最近では逆のパターンも多く報告されていることが分かってきました。
つまり、ヒトの病気が動物にうつった例です。

「ごめんね、ちょっとお口を開けてねー、はい、あ~ん!・・・かなりの重症ですねぇ。」

動物病院で無理やりアゴを押さえられ、目をシロクロさせているのは、小型犬のヨークシャーテリア。
可愛いワンコが患っている病気は、なんと人の歯周病。飼い主からうつったと考えられるそうです。
歯周病は、ヒトの口腔内に存在する細菌や、プラーク(食べカスと共に歯に固着した細菌の塊)が原因で歯茎が炎症を起こし、歯を支えている骨が溶けてしまう病気ですが、動物がこれに罹って歯を失うと、食べることが出来なくなって命に係わるので、深刻な問題となります。
人間と接触しない野生動物ではほとんど例が無い病気ですが、ペットや、動物園の動物たちには多い
そうです。
犬や猫が飼い主の顔や手を舐めたり、人が噛み千切った餌を食べたりしてうつるわけですね。
大事なスキンシップなのに、どうしよう?「困ったワン!」
水族館でアクロバティックなショーを見せてくれるイルカやアシカ達にも歯周病が広がっています。
ある水族館で、飼育員6人と、アシカ7頭のお口の中を調べたところ、彼ら全員(7頭と6人)から
同じ遺伝子の歯周病菌が検出されたそうです。
飼育員からアシカにうつったのか、その逆なのかは分かりませんが、彼らの間で歯周病菌の受け渡しが起きたことは間違いないといいます。

いま、懸念されているのは、野生動物への歯周病の広がりです。
昔に比べて、人と野生動物のテリトリーが近くなっており、予期せぬ遭遇が引き起こす事故も増えて
いるようですが、もしも人に由来する病気が自然界に何らかの影響を及ぼすのであれば、動物たちとの
関わり方を、考え直す必要があるかもしれません。


By Admin|2023年6月2日|2023年,ニュースリリース|


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