ヒドロキシクロロキン(HCQ)は全身性エリテマトーデス(SLE)および皮膚エリテマトーデスにおける治療の基盤薬(アンカードラッグ)として位置づけられています。
その理由は、疾患活動性の制御、再発の抑制、長期予後の改善、臓器障害の予防、ステロイド使用量の低減、そして比較的良好な安全性プロファイルが示されているためです。これらの効果は無治療や他薬単独治療では得にくく、HCQは治療戦略の中心として国際的に標準化されています。

1.この薬の役割(基本的な位置づけ)
ヒドロキシクロロキン(HCQ)は、マラリア治療薬として開発された薬剤ではありますが、免疫調節作用を持ち、現在ではSLEおよび皮膚型エリテマトーデスに対する第一選択薬とされています。国際的な治療ガイドライン(EULAR, ACRなど)では、ほぼすべてのSLE患者に対して、疾患活動性が低い状態あるいは臓器障害がない軽症例を含め、HCQの継続投与が推奨されています。簡単に言うと、体の中で起きている「免疫が自分を攻撃してしまう状態」をやさしく整える薬です。
強い薬というより、「体のバランスを整えて病気がひどくならないようにする薬」です。
2.病気の再発を防ぐ
SLEでは、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。HCQを飲むと、症状がぶり返す回数が減ります。
3.将来の体を守る
長く薬を続けた人は、臓器(特に腎臓)が悪くなりにくく、長い目でみた健康状態が良くなることが研究でわかっています。これは、病気による炎症が少なくなるためです。
4.ステロイドを減らす助けになる
SLE治療ではステロイドが使われることがありますが、ステロイドは長くたくさん使うと副作用が出やすくなります。HCQは、ステロイドの量を少なく抑えやすくします。
5.安全性と注意点
この薬は長く使える比較的安全な薬です。ただし、まれに目(網膜)に影響することがあるため、年に1回、眼科の検査を受けることがすすめられます。検査を続ければ、ほとんどの人は安心して使えます。
6.アンカードラッグとしての意義
SLE治療は、まずHCQを始め、必要に応じて他の薬を追加していく形です。つまりこの薬は治療の「土台」になる薬であり、これが「アンカードラッグ」と呼ばれる理由です。
まとめ
ヒドロキシクロロキン(HCQ)は、病気を落ち着かせる、将来の悪化を防ぐ、ステロイドによる
副作用を減らすという点で、SLE治療にとても大切な薬です。続けて飲むことに意味がある薬です。
また、HCQはがん細胞に作用する可能性が基礎研究で示されており、他のがん治療と併用することで効果を高める目的で、臨床試験が多数行われています。
《参考》
全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫系が自分自身の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。この病気は、20〜40代の女性に多く見られ、全身の様々な臓器に炎症や障害を引き起こします。主な症状は、発熱、倦怠感、関節の痛み、皮膚の赤み(蝶形紅斑など)で、重症化すると腎臓、神経系、肺、心臓などに影響が及ぶことがあります。原因は不明ですが、遺伝的素因に環境因子が加わることで発症すると考えられています。