日本人に最も好まれている作家のひとり司馬遼太郎さん。
今年『竜馬がゆく』の生原稿の一部が発見され、司馬遼太郎記念館で
特別展示(※)として公開されていました。
(『竜馬がゆく』自筆原稿を発見 毎日新聞2017年6月23日)
(特別展示『幻の自筆原稿』案内状より)
司馬遼太郎記念館は、司馬さんが生前過ごしたご自宅に隣接しています。
この記念館で何といっても目を引くのは、高さ11メートルの書架に収められた
2万冊の蔵書です。
それでも、ご自宅にある蔵書6万冊のうちの一部だというのですから驚きです。
司馬さんは新たな作品の構想を練る時、本屋に赴き、資料となる書籍を大量に
仕入れていました。
代表作のひとつ「竜馬がゆく」の時には、約3000冊、重さ1トンにも上る資料を
買い集めたといいます。
司馬さんがお亡くなりになったのは1996年の2月。
その3か月前に日本国内で発売され、大ブームを起こしたのがパソコンの
オペレーティングシステムMicrosoft Windows 95です。
この時期から、私たちを取り巻くインターネット環境は急激な変化を遂げました。
辞書を一枚一枚捲って調べていた単語も全部、パソコンを使い、マウスの
クリック一回で調べられるようになりました。
通勤途中の学生やサラリーマンの手に握られているのは、新聞や文庫本から
スマートフォンが多くなりました。
司馬さんの作品も、従来の文庫本からkindleのような電子書籍で読まれることも
多くなったのではないでしょうか。
司馬さんが収集した大量の資料も、パソコン1台の中に
必要な情報を集約してしまうことも不可能ではないように思います。
パソコンのマウスのクリックに必要な指の力は60~70gだと言われています。
司馬さんの仕入れた1トンの資料と比べると驚くほど軽くなりましたね!
『竜馬がゆく』の一場面で、
「天が、この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし、
その使命がおわったとき惜しげもなく天へ召しかえした」というくだりがあります。
日本人の情報との接し方の劇的な変化のさきがけとなる時期に活躍されたことや、
作品を通じてペン1本で日本中に勇気を与えたことから、
司馬さんも天が地上にくだした作家だったのかもしれません。
イーパートナーズは、長らく友の会の企業サポート会員として司馬遼太郎記念館を応援しております。
(※現在『幻の自筆原稿』展示は終了しています。)