たまに銀座でクラシック♪

東京銀座の小さなコンサートホールで、毎年11月にちょっと小粋な音楽会が開かれています。
出演者は2人。印田千裕さん(ヴァイオリニスト)と印田陽介さん(チェリスト)の姉弟デュオです。
プログラムはちょっと変わっています。
毎回、初めて見る曲がたくさん並んでいます。
誰でも一度は聴いたことがあるような、お馴染みの曲はほとんどありません。
でもこれが、すこぶる面白さなのです。
この音楽会では、ヴァイオリンとチェロの二重奏で演奏できる、古今東西の隠れた名曲を掘り出して
きては紹介してくれます。
最初の頃はまだ、ヘンデルのパッサカリアとか、有名なオペラの曲をアレンジしたものとか、耳に
馴染みのある曲が入っていたのですが、だんだんとマニアックになってきて、今年にいたっては、
ついに1曲も知っている曲がありませんでした!
でも全曲、筆者の好みにぴしゃりとはまって大満足だったのです。
・・・1曲だけ、ボッケリーニの曲が入っているなと思ったら、実は別の人の作品で、有名な音楽家の
名前を拝借しただけでありました。
これについては演奏者から冗談めかした説明があり、最後にアンコールで「本当に」ボッケリーニが
作った小品を演奏してくれました(笑)。

古典の曲はメロディーが美しくて親しみやすいのですが、現代曲(近現代に作曲されたクラシック
音楽)は難解で聴き辛いものが多くて、おまけに常人では演奏するのも難しく、『謎』の一言が
浮かんでしまいます。
しかしこの姉弟デュオはそういう曲も積極的に採り上げて、その抜群のテクニックでもって、
鮮やかに謎を解いてくれるのです。
私たちが開けることが出来ない玉手箱を開けて、ほら、こんなものが入っていたよ、と見せてくれる。
こちらも、初めは驚きばかりだったのですが、最近では、斬新で強烈なリズムの面白さにハマッて
しまって、むしろ定番のお馴染みの曲が詰まらなく感じてしまうほどです。
何せ、録音データも手に入らないものばかりですから、ここでしか聴けないものが聴けるというのは
大きな魅力です。
さて来年は、どんな曲が登場するのか、今から楽しみでなりません。

ヴァイオリンとチェロは、弦が4本しかないので一見して単純な楽器に見えますが、そこから発せられ
る音はとても複雑です。
弦が細かく振動することによって、実際に弾いた「基音」とは別に、もっと高域の色々な音が立ち
のぼって現れます。これを「倍音」と呼びます。
たったひとつの音を、弓でスーッと弾いただけでも、「基音」と「倍音」がハモって、豊かな美しい
音色が響きます。
弦楽器の最たるところですね。
たとえばピアノは、音を出した瞬間から減衰がはじまる楽器ですから、人の耳に届く音は、「基音」が
中心になります。
一方、ヴァイオリンやチェロは、弓を引いている間は音が持続するので、発音したあとに音量を上げる
ことができて、生ずる「倍音」も、より複雑に変化しながら響きます。
・・・何十種類もの香料を混ぜて作る香水みたいですね。
トップノート、ミドルノート、ラストノート、香りはゆっくりと変化していきます。
「音」は空間に放されると、複雑な音色を含んでゆらゆらと周囲に漂いながら、数秒で幻のように
消えていきます。
コンサートホールなどの音響が計算された環境で聴けば、さらに余韻をもって、消えていく音を見送る
ことが出来るのです。
「倍音」は、人の声にも現れます。
中世ヨーロッパの教会で、聖歌を合唱したときなどに、本来は聞こえるはずのない高い声がしばしば
聞かれたという記録が残っているそうですが、これはおそらく、「倍音」であったと考えられます。
ただ、当時はまだ「倍音」が科学的に解明されていなかったので、人々はそれを「天使の声」だと
思って神秘的に語っていたという話です。
歌わなくても、例えばイベント会場などで館内放送の声がやたらと耳に心地よく響いたりしますね。
あれも倍音の効果でしょう。
・・・倍音を多く含んだ声を持っている人はお得かもしれません。
声だけで、第一印象は最高ですね。


By Admin|2022年12月9日|2022年,ニュースリリース|


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