桜が、咲かなくなるかもしれない

今春の桜は早かった。
東京では靖国神社のソメイヨシノが標本木になっておりますが、平年より9日、去年より5日早い
3月22日に、大勢の見物客が見守る中、東京管区気象台の職員が花の咲き具合を検め、「満開宣言」
を行う姿がニュースで流れました。
少し前までは、桜吹雪に花筏(はないかだ)は、4月初めに行われることが多い入学式で見られる
光景であったと思いますが、最近はどうも、桜が咲くのが早すぎて、卒業式の頃にすでに満開、
4月初旬にはほとんど散って、葉桜に変わっているというパターンが増えてきたようであります。
なぜそうなったのか、地球温暖化の影響が大きいと言われますが、加えて、都心ではヒートアイランド
現象もあるので、さらに気温が高くなって、桜の開花を早めているようです。
・・・とは言っても、暖冬だから桜が早く咲く、というような単純な話では決してありません。

桜が順調に開花するには、実は色々な条件があります。
春に花が散った後、暑い夏の間に翌春の花芽が作られます。
秋になって涼風が吹き始め、葉が落ちると、花芽は一旦「休眠」に入って成長が止まりますが、
1~2月頃に真冬の厳しい寒さに晒されることで目を覚まし、春に向けて開花の準備を始めます。
これを「休眠打破」と言います。
3月、気温が上がり始めるのに合わせて、花芽は成長していきます。そして満を持して、つぼみが
ほころぶのです。
このように桜は、気温の変化で季節の移ろいを感じ取って、1年間のサイクルを生きているのです。
つまり、冬に、ある一定の期間、「厳しい寒さ」という刺激を受けなければ、ちゃんと覚醒して咲く
ことが出来ないわけで、暖冬が続くと、逆に開花が遅れてしまう原因になるのです。

今年の冬は、マトモに寒かったかなと思います。
・・・この数年、妙に生ぬるい冬が続いておりましたので、久し振りに「冬」を味わったというところ
です。
でも、その後の気温の上がり方が早すぎましたね。
気温が乱高下するのはこの時期ならではですが、3月初めでいきなり20℃を超える日が何日も続くのは
ちょっと異常です。
例えば20年前の2003年3月の東京の気温はどうだったのか、記録を見ると、初旬、中旬までは
ほとんどの日が最高気温で10℃前後。
24日に初めて19℃を超えて、そのあと急速に上昇していました。
・・・ちなみに、その2003年に東京で桜が開花したのは3月27日。
さらに昔、1990年代では、4月初旬が普通でありました。
それが今年は、2月の終わりにはもう寒さが緩んで、3月頭に初夏の陽気が漂うという状態でしたから
桜もびっくりしたでしょうね。
大慌てで花芽をふくらませて、3月14日には、東京が全国一番乗りで開花しちゃいましたよ。

それでもまだ、しっかり咲いてくれているから良いのです。
何でも、このまま地球の温暖化が進んで、冬の寒さがいっそう甘くなると、桜は、「秋」→「冬」の
移り変わりを感じ取ることが出来なくなり、ずーっと『秋』だと勘違いして、昏々と眠り続けてしまう
ことになるだろうと言うのです。
・・・桜眠り姫って、可愛いですけどね。桜の咲かない春なんて、想像できるでしょうか?

春夏秋冬、季節の変化がハッキリとしている日本の四季ですが、桜はまさに、そんな日本の気候の中で
生まれた樹木です。
それが、近年の気候変動によってリズムが狂い始めているようで、関東地方で開花が早まる一方、九州では逆に遅くなる傾向にあると聞きました。
その内に、「咲かない桜」や、「季節外れに狂い咲きする桜」、「一年中、中途半端に咲き続ける桜」などが現れると予想されています。
年中ダラダラ咲き続けるなどと、興ざめするでしょうが、狂わされて可哀そうなのは桜ですね。
当然のことながら、狂い咲きの花の状態は、見た目も良いはずはありません。
青空に映えて良し、そぼ降る雨に濡れるも良し、美しい桜を愛でる日本の春の風物詩が消えて無くならないように、願うばかりです。


By Admin|2023年3月31日|2023年,ニュースリリース|


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