沈む円、1 ドル 260 円まで 底値のない「フリーフォール」状態に!?

際限のない円安は物価高に拍車をかけ、個人消費の失速につながりかねない。政府・日銀が内需の好循環が「悪循環」に転じるのを防ごうと再発動に動いた可能性がある。円安を経済の強さに変える成長戦略が急務だ。

5月1日夕のニューヨーク市場(日本時間2日早朝)。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で利下げ時期の先送りを示唆したものの、「利上げへの転換」の可能性は否定した。
想定以上に日米金利差が開くような状況にはならず、円売りの勢いが弱まっていた。そこに巨額の円買い注文が持ち込まれ、円の売り手は虚を突かれる。市場では介入との見方が強まった。

4月29日、円が一時1990年4月以来の1ドル=160円台に急落した直後、大量の円買い注文で急反転した。
海外の投機マネーが日米金利差を理由に円売りを仕掛け、当局は巨額の資金の投入を余儀なくされた可能性がある。
この日の160円24銭は1990年4月以来の安値。1990年当時は日経平均株価が89年末の高値を境に急落に転じ、債券、通貨とともに売られる「トリプル安」が頻繁に市場を襲っていた。

LSEG (ロンドン証券取引所グループ)のデータによると、160円35銭を割り込めば、86年12月以来の安値となる。85年のドル高是正の国際協調「プラザ合意」をきっかけに、日本が急激な円高に直面していたころだ。

もし円安がプラザ合意前後の経路をさかのぼるとすると、260円近辺まで底値のない「フリーフォール」状態になる。
2024年の日本経済は復活への岐路に立つ。30年続いた長期停滞からの脱却を見据え、「物価と賃金の好循環」を強めようとする局面だ。
多くの消費者は物価高に所得増が追いつかない状況だが、今年の春季労使交渉でまとまった大幅な賃上げが実際の給与に反映されれば「物価を超える所得増」が広がる。

だが急激な円安が続き物価高に拍車がかかると、物価を超える所得増はなかなか実現しない。仮に中東情勢の緊迫を背景にした原油高などが重なると、企業は輸入コストが膨らみ、賃上げ余力がむしばまれる。

好循環が止まり、実質的な所得減と企業収益の低迷という「悪循環」が生じかねない。
だが米国のインフレが収束しない限り、介入は時間稼ぎにすぎない。日本が自らの手で苦境を打開するには、円安メリットを最大限生かす経済構造の改革しかない。

かつて輸出立国だったころ、円安は日本にとって大きな追い風だったが、この30年で空洞化が進み、輸出増が内需を潤す経路が細った。日本で稼げる産業の再集積をめざす成長戦略が急務だ。日本経済新聞(2024/5/2)「一部抜粋」


By Admin|2024年5月14日|ニュースリリース,|


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