過去にあった「預金封鎖」 とは⁉

2023年末時点で日本銀行の日本国債の保有残高は580兆円を突破した。日本の国債の発行残高は約1100兆円なので、その5割を占める。日銀が異次元緩和を導入した2013年当時の保有残高は約130兆円だったので10年で約4.5倍。先進国では類を見ない異常な数字である。
その一方で民間銀行は逆に「国債離れ」が顕著だ。三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクを合わせた国債残高は2023年9月末から半年間で11兆円減少。長期金利の上昇により、国債を満期まで保有することによる損失に備え、国債を日銀に転売することで回避しようとしている。このような状況下、日銀だけが大量に国債を買い支えている現状を考えてみる。

このような異常な事態に「日本はいよいよ財政危機が迫っており、水面下で政府はそれに備えた行動を始めているのでは」と指摘するのは『預金封鎖に備えよ』の著者、小黒一正法政大学教授だ。
太平洋戦争終戦直後に断行された「預金封鎖」「通貨切り替え」「財産税」という暴力的な財政再建が行われた過去の歴史から「現在の異常な金融政策は、日本を『第二の敗戦』にさせるかもしれない」と警鐘を鳴らす。

日本は終戦直後、巨額の戦費をまかなう為に、莫大な額の戦時国債を発行した結果、財政危機とハイパーインフレを招いた。当時、危機脱却を名目に政府がとった施策が、5円以上の旧銀行券をすべて銀行などの民間機関に預けさせ「預金封鎖」するという異常なものだった。引き出せる金額は月に500円(夫婦と子ども1人の標準世帯の場合。現在の額でおよそ20万円)までに制限し、必要な金額だけを、旧札ではなしに、新銀行券のみで引き出させるようにした。
また、それと並行して新たな特別課税を断行。なかでも「財産税」は、一定額を超える預貯金、株式、不動産などの財産に一回限り特別に課税するというものだが、最高税率が90%という驚くべき数字だ。戦後のただでさえ苦しい生活の中で、国民にとってはまさに地獄のような状況であったと想像できる。
その後、数年で危機は収束するが、結局今の額で約1000兆円という国民の財産が消滅したことになる。政府の負債と言っても、そのツケを払わされたのは国民だということを忘れてはいけない。

当然のことだが、通常、政府が国民の財産や所得に課税するには、国会の議決や承認が必要である。これは政府にとって容易なことではない。しかし、マイナス金利政策はすべて日銀の独断で行うことができるのだ。マイナスの幅にも限界の規定はなく、極端なこと、マイナス100%にすることも可能だ。
日銀はこれを利用すれば日銀当座預金(民間銀行が日銀に預けている預金)の大部分を没収し、国債と相殺することで債務処理を行うことができる。日銀当座預金の原資は私たちの預金だ。これは私たちのお金が間接的に収奪されることになる。
実行に移されるかどうかは別として、日銀と政府はそうした課税の「ツール」を手に入れたのだと小黒教授は警告する。

終戦直後のような露骨な形ではないにせよ、そのための準備が、すでに進められている可能性は否めない。国の借金の私たちへの押し付けはすでにはじまっていると言える。最悪の場合、預金封鎖や財産税の復活といった悪夢が脳裏をよぎる。
終戦直後の日本は、それでも若かった。復員とともにベビーブームが始まり、人口が急増し、日米同盟と太平洋ベルト地帯での輸出国家モデルが戦後の経済成長を生んだ。
しかし、これから老いが進み人口が減る今の日本にそんな元気はない。
ここで日銀の無策や政治の混乱によって金融・財政システムが崩壊すれば、経済大国日本は終焉を迎えることになるだろう。

それでは私たちはどうすればよいのか?
終戦直後当時、事前に情報を得て、預貯金を大量に引き出し株券に替え、新銀行券に切り替わって安定してから現金化するという人たちも存在した。また、資産を貴金属などに替えて隠し、課税対象の捕捉から逃れた人たちもいたという。
現在なら、資産を海外に避難させたり、「仮想通貨」に資産を変えることなのかもしれない。仮想通貨は通常の通貨とは異なり、保有していれば世界中のどこでも使える。海外への送金も金融機関を介さないため手数料がほとんどかからない。円を仮想通貨に替えておけば、国から資産を守ることが可能だ。
いずれにせよ、円だけに全財産を預けるのはリスクが極めて高いと言わざるを得ない。国が破綻すれば、私たちの資産は毀損され、人生そのものが大きく狂う。

預金封鎖と併せて課された財産税は、資産額に応じて25%から90%の税率がかかり、課税対象は預金だけでなく、株式、不動産、金なども含まれていた。
なかでも財産税を課しやすい資産は預金であり、税金を課す時点で対象となる預金を減らさないために、預金封鎖をする必要があった。また、政府はタンス預金も見越して預金封鎖新円切り換えを同時に行い、旧紙幣を使えなくした。
預金封鎖を実施した当時の大蔵大臣は渋沢栄一の孫、渋沢敬三であった。
はからずも今年7月3日には20年ぶりに新紙幣が発行される。もし今日、渋沢栄一が新1万円札を見たら何を思うのだろうか。


By Admin|2024年6月24日|ニュースリリース,|


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