円安誘う「貯蓄から投資」 政策の二面性突く市場

外国為替市場で円安圧力がいっこうに収まらない。日銀が追加利上げの機会をうかがい、米連邦準備理事会(FRB)が次の一手は利下げとの姿勢を示しても、円高に転じる兆しは依然見えないまま。今回は、その背景を探ってみます。

「今が歴史的な円安で、今から外貨を買うのは損」と考える人がいるのは確かだが、「今は円安の序の口で、これから円の大暴落が始まる」と考える人が上回れば、円の急落が始まる。
NISAを始めて最初は少額でオルカン(オールカントリー)やS&P500を積み立てた人も、思いのほか円ベースでの資産が増え、積み立て額を増やせば、円安は加速する
円安が進めば進むほど、円の先行きへの悲観論が強まり、円から外貨への動きが加速する可能性がある。日銀が追加利上げの機会をうかがい、米連邦準備理事会(FRB)が次の一手は利下げとの姿勢を示しても、円高に転じる兆しは依然見えないまま。背景には、長期運用を見据えた個人マネーによる外貨資産投資の影響が見えてくる。

新NISAが、今後4年で最大対ドル6円の円安圧力に
-海外への資金流出額は最大4兆円に-(日本総研)

2024年1月から新しい少額投資非課税制度(新NISA)が開始された。年間投資枠が増大したほか、非課税保有期間が無期限に。家計の資産形成促進と経済成長に必要な資金の供給拡大が目的であったが、長引く円安の影響で公募投資信託での国内株式への投資比率(ETFを除く)は1割程度で海外の株式や債券などが多くを占める状況。NISA口座の増加とともに、国内の投資資金が海外資産にシフトするという皮肉な結果を招いている。

海外への資金流出の増加は円安圧力に

試算によると、新NISA開始による国外へのネット買付額は、年0.7兆円~3.9兆円程度となる見込みだ。
これはドル円相場を、政府プラン最終年の2027年にかけて1~6円弱押し下げる計算。市場では、日米の金融政策の方向感の違いを背景に中期的なドル安・円高を見込む向きが多いが、新NISAの開始は一定の逆方向への圧力をもたらす可能性がある。

日銀が大規模な為替介入で円買い、ドル売りを行なっても、裏で個人が数兆円オーダーで円売りの為替介入をしてるのと同じ。円安に拍車をかける結果となっている。
財務省の統計によると、投資信託などを通じた海外投資を映す「株式・投資ファンド持ち分」は24年1〜5月の合計で5兆円を上回る大幅な買い越しとなった。一部は為替リスクを回避した投資も含まれているが、売り越しだった23年の同期間と比べ、最大5兆円強の円売り需要が生じた計算になる。

企業から個人へと主体こそ代わったものの、企業の貿易・サービス収支を大きく上回る円売り需要が新たに生じ、需給面から円安を支える構図が鮮明になっている。しかも新NISAを通じた個人の海外投資の場合、長期運用を前提にした積み立て方式の投資も多く、金利差の変化にかかわらず、継続的に円売り注文が出やすい。
ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融氏は、個人の海外投資がさらに膨らむ可能性を指摘する。「2000兆円の個人金融資産に対し、5兆円の海外投資は決して大規模といえない。まだ本格化していないと考える方が自然だ」として、さらなる円安の進行を予想する。

政府・日銀は円安インフレによる消費低迷などを強く警戒し、大規模な円買い介入を実施して過度の円安を抑え込む姿勢を鮮明にしている。だが一方で、岸田政権が掲げる「貯蓄から投資」の看板政策である新NISAが大幅な円安を推進するエンジンになるという皮肉な構図が浮かび上がる。
政策の二面性を市場は突いているとも言える。

海外の投資家もこうした需給構造の変化を受け、円売り・ドル買いの姿勢を変えていない。政府・日銀の円買い介入にもかかわらず、米商品先物取引委員会(CFTC)によると、ヘッジファンドなどの投機筋によるドルの買越額は6月に入って再び膨らんでいる。市場では「日米金利差が大幅に縮小する状況にならないかぎり、円安に振れやすい構造は変わりそうにない」との見方が広がっている。国家として根本的な政策変更や国際的な協調が必要となると同時に、一般市民は各人、将来の自分を見据えた、資産防衛策を1日でも早く講じることが必要といえるのではないだろうか。(日本経済新聞 一部抜粋)


By Admin|2024年7月1日|ニュースリリース,|


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