「免疫抑制の阻害によるがん治療法の発見」によりノーベル生理学・医学賞を受賞し、後にがん免疫療法の特効薬
「オプチーボ」を開発した京都大学名誉教授、本庶佑教授が、2021年の年末のTV大阪のロングインタビューで
イベルメクチンをはじめ、日本の医薬行政のありかたに関して見解を述べています。
(抜粋)
〈TV大阪〉
経口治療薬の方なんですけどもファイザーパクスロビドと、メルコのモルヌピラビル、この辺の有効性ですね。
〈本庶教授〉
はい。これは、正直言って僕もデータ見てないし、判断は自分自身としては難しい。ただね、僕はちょっと残念に思うのは、前から存在する既存薬、例えばイベルメクチンなどのね、治験がなかなかちゃんとできない。それで大規模な治験をやるには、ものすごく経費がかかります。北里大学でやっておられるということも聞いてるし、興和薬品でサポートしてるというのも聞いてるのですけども、まだ承認申請まで行っていません。日本国内では感染者が少ないということもあって。だけど海外の、いろんなデータを見ると、効いているのですよ。あるいは予防的にも効いているという報告もあります。ですから、これきちっと日本でね、やった方がいいと思うのですが、これをやる製薬企業というのが無い。興和さんは別としてね。大手はやらない。なぜか。簡単に言えば儲からないからですね。イベルメクチンっていうのも何十年前に開発されて、特許も切れており、ジェネリックはたくさん出ていて、単価が安い。そうすると治験に膨大な投資をしても、元が取れないのじゃないかとこういう考えがあると思いますね。
〈TV大阪〉
ちょっと医療と、患者さんとの間の距離が、なんか期せずして出来てしまっているような。
〈本庶教授〉
そこのところはね、政策的な支援と、いうことも十分考えてもいいと思うのですね。ただ、企業は承認されても、売っても利益が上がらないと、こういう論理はあると思うのですがね。しかし、国民側から言うと、安くて効けば、その方がいい。だからここはね、今後とも、メガファーマの販売戦略、こういう問題と、我々大げさに言うと、人類の健康の問題をきちんと整理していかないといけないと思いますね。薬の承認というのは、確かに慎重にやらなきゃいけない。だけども、安全性ということに関してね。既存薬の適用外使用を認めていくということは、新薬の安全性審査とは格段に違うわけです。ですから、ここはもう少し柔軟な対応をすべきだと私は思います。
〈TV大阪〉
新しい年が始まりますが、ちょっとコロナ禍の中でちょっと気になったのですけどもワクチンとかですね、治療薬の開発がなんか、外国がほぼ主導してきた、というのがですね。もちろん医学的にもよるのですけども、経済的にもね。
なかなか経済とか企業の論理っていうのも無視はできないのですが、
〈本庶教授〉
いやそれはね結局、製薬企業というこの分野が日本では非常に特殊な構造になっています。企業数が世界中に比べてべらぼうに多い。規模が小さい。そして国内のマーケットだけで、成り立つように厚労省が保険薬価を決めています。国際競争力がない企業がたくさん有ります。それで、ワクチンを作れと言っても販売マーケットを持っていません。これではね。日本のいわゆる一種の防衛ですね。防衛の一角が極めて危ういと思いますから、私は早急に医療医薬品関係の産業政策を明確にして、国際競争力がある、せめて世界のトップテンに何社か入れるような、そういう方向に持っていかないと。一時的にね、補助金を出してワクチンを作れと言われても、それを販売網として全世界を相手にする資本規模、マーケット、こういうものを備えた一流国際企業を日本で育てる必要がある。それができてないと思います。
〈TV大阪〉
医療崩壊を防げるかどうか、それから人の命を守るっていうことが、社会経済の成立および発展のほとんど基本だと思うのですが。前回の「緊急提言」の時に、先生の発言の裏にそういう意図を感じたのですけども、その辺はどうですか。
〈本庶教授〉
ですから、ワクチンとか医薬品を自国民に供給できないと、外国の輸入に頼らなきゃいけない。ということは一つの生命線を握られてる訳ですから。これはやっぱり自国の国民の生命を守るという、政府の役割としては、非常に問題があると。で、こういうところをきちっと政策的にやっていく。まぁ、メジャーな国しか製薬能力を持っていないのですよ。アメリカ、ドイツ、イギリス、フランス、スイスですね。日本はその一角なのですが、あまりにも見劣りがしている。ここは何とかしていかなきゃいけないと思いますね。
〈TV大阪〉
経済発展のためにも、化学の世界の投資が必要だと、
〈本庶教授〉
やはり生命の安全が保障されないとやはり安心して経済活動もできない。そういうこととセットにして。これまで医薬品というのは、日本の主力産業ではない(まぁ、ほとんど輸入超過ですよね、ものすごい)でしたけども、これはもう別の安全保障という観点からもね、産業政策を見直すべき時期だと思いますね。
新薬、特にコロナワクチンに関しましては、アメリカ(ファイザー/モデルナ)とイギリス(アストラゼネカ)によって(社会主義国を除いて)世界中が独占状態になってしまった事について、ある種、違和感を感じた方も多いのではないかと思いますが、単なる医学的な要因以外に、政治的、経済的な要因が複雑に入り組んでいることが、垣間見えるようなインタビュー内容でした。
現在イベルメクチンは、薬局では、医師の処方箋が無いと購入できず、外国からの個人輸入は正式に認められているものの、保険適用外となってしまい、なおかつ航空運賃などの経費も負担となり、かなり高額な負担を強いられる結果となっております。
一方的な情報に流されるだけでなく、世界の多くの情報を多面的に捉え、自らでその判断をして行く事が必要ではないでしょうか。