季節の移り変わりと虫の声

虫の声は季節の移り変わりを感じさせてくれます。季節ごとに変わる虫の音は、夏の始まりや終わり、物静かになる冬の到来などを耳から教えてくれているのです。虫たちは短い寿命を使って懸命に、私たちにとても豊かな想いを伝えてくれている小さな癒しと言ったところなのではないでしょうか。

私の家の近所には小さな公園があり、休日はよく散歩をしています。先日、いつも通りの散歩中、ふと違和感がありました。公園で子供たちがボール遊びをしているのに、何か物足りなさがあり、無声映画でも観ているかのようでした。
季節を伝える虫たちの声
その違和感は、セミの声がすっかりしなくなっていたため。つい数週前まで、うるさいくらいにミンミンゼミやアブラゼミの鳴き声が聞こえ、夕方には遠くの山からヒグラシの声も聞こえていたはずです。しかし先日は、すっかり静かになっていたのです。
その代わり、夕方まで散歩していると、草むらからスズムシやコオロギなど秋の虫たちの演奏が始まりました。
ちなみに、私が子供の頃、弟は夏になると森からカブトムシやクワガタを採ってきて、昆虫ケースに詰め込んで飼っていました。このため、夜になると、これらの虫が大運動会を開き、ガタガタとケースにぶつかったり、ブーンという羽音で、うるさかったのを覚えています。
さらに父は、スズムシを飼っていて、カブトムシの季節と入れ替わるように、スズムシがうるさいほど鳴きはじめ、秋を感じさせてくれました。

地下暮らしを終え、一瞬の夏を謳歌
時候の挨拶にも使われるセミは夏のシンボルとして私たちの生活に入り込み、彼らの鳴き声は、夏到来の合図にもなっています。しかしセミの寿命は、声を聞かせてくれる期間からは想像できないほどの長さだったりするのです。
通常、セミは地下で数年もの間、幼虫として過ごし、成虫になってからはわずかしか生きられません。なかには17年や13年も地中で過ごすものもいて、こうしたセミたちは10年以上もの間、真っ暗な地下に待機して、ある日突然、大地に現れて大空での短い生涯を全うするのです。

長寿の虫による種の保存戦略
一般的に昆虫というと、短命だと思われがちですが、先に紹介したセミのように10年以上生きる種類のものもいます。さらに長生きな虫として、オーストラリアのナスティテルメス・シロアリの女王アリは、なんと約100年もの寿命を持つと言われています。体長は10cmにも達し、驚異的な産卵ペースで、一生で数十億個もの卵を産みます。この女王アリは、コロニーの存続を支える要として、一生を捧げる存在です。そして生まれてきた卵は、コロニー全体で大切に育てられます。
しかし寿命が長いということは、それだけ危険なめにあって、生きながらえているということになります。17年ゼミは、すべての仲間が17年生きられるわけではありません。なかには長いこと餌にありつくことができなかったり、地中の動物などに捕食され、 短命に終わるものもあるでしょう。
つまり、17年生きながらえて、子孫を残せるセミは運が良いか、それだけ強い生命力を持っている証しだということもできるのです。強いものを残していくことで、さらに強くなり、代々継続させていこうという狙いが見えてきます。

寿命の長い短いに正解はない
逆に短命な虫としては、ハエや蚊の仲間が有名です。これらの虫は2週間から1ヶ月程度しか生きられません。逆に言うと、それだけ速いサイクルで世代交代を繰り返して、種の保存を狙っているわけです。
卵が孵って、少しでも早く成虫になり、次の卵を生む。このことで、外敵から狙われやすい幼虫の期間を少しでも短くしようという狙いがあるのかもしれません。また、必要な餌も最小限で済むでしょう。
長く生き続けられる優秀な種を残し、役割分担することで種の存続を狙うか、とにかく速く成長して多くの卵を作ることで種の存続を狙うか、方向性は正反対に見えます。
しかし、どちらが有利なのかは分かりません。もしも、答えが出ているとしたら、特定の種が爆発的に増えているはずです。もしかしたら、地球の環境が大きく変わって、セミやシロアリが世の中を支配する、、、そんな未来があるのかもしれません。

冬になり、いよいよ静かになってしまう前に、虫の声を探しに庭や草むらに出てみるのも良いかもしれません。


By Admin|2023年9月27日|2023年,|


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