大洪水の危機がやって来る

ここ10年くらいでしょうか。夏の暑さが異常なレベルに達していると思うようになったのは。
今や気温が36だ、37だと聞いても全く驚かず、逆に30やそこらでは「今日はちょっと涼しいね」
なんて言葉が飛び出すようになりました。
筆者が子供の時分には、30で充分に暑いと思っていました。
秋にかけて日本列島を襲う台風は、年を追うごとに巨大化していますし、冬の北国に降る雪も、梅雨時
の雨も、けた外れな降水量を記録するようになり、各地に甚大な被害をもたらし、「今までは大丈夫
だったから」という、経験に基づく判断が通用しないことを、私たちに突き付けてきます。
気候が、暴力的になってきた、と感じています。
気温の上昇については、火山の噴火や、太陽の活動の変化などの自然現象に加えて、近年、排出量が
取り沙汰されている二酸化炭素などの温室効果ガスが、熱源である赤外線を吸収してしまうことで、
地表の熱が放出されずに溜まるという、人為的な原因も大きいという話はよく聞きますね。

では「雨」は?ここ数年でよく耳にするようになった「線状降水帯」。
積乱雲の大行列のことで、これが原因で集中豪雨が起きるわけですが、いったいどんな仕組みで発生
するのでしょうか?
積乱雲は、入道雲の親玉です。
夏の日中に地表近くで温められた空気が軽くなって高く上昇する気圧が下がって冷やされる水蒸気が
飽和状態になって雨雲ができる。
これが入道雲。夕方になってざっと降りますね。
時間は短いので大した降水量にはなりません。
上昇気流が激しく、入道雲がどんどん成長すると積乱雲になりますが、いずれにしろ単体ではすぐに
消滅してしまいます。

ところが、この積乱雲が連続して発生する場合があります。
6、7月頃、日本列島には梅雨前線が停滞しています。
前線とは、寒気と暖気など性質の違う空気の境目のことであります。
その境目では軽い暖気が重い寒気の上に乗り上げて上昇気流が出来ることで、雨雲が発生しやすくなります。
この梅雨前線に向かって、南西方面から吹き込む温かく湿った空気がぶつかり、気圧配置の条件に
よっては、同じ場所に長時間にわたって上昇気流が流れ続け、積乱雲が次々に出来上がります。

問題は、水蒸気の量です。
太平洋側の日本近海の海面温度が、30を超えているというニュースを聞きましたが、要は、これだけ
温度が高い海面を渡ってきた風には大量の水蒸気が含まれているわけで、水蒸気の量が多ければ多い
ほど、積乱雲は急激に成長し、それが列をなして集中豪雨を引き起こす「線状降水帯」となるのです。
地球温暖化が原因のすべてではないとは思いますが、しかし水蒸気も、二酸化炭素以上に赤外線を吸収
します。
二酸化炭素が増えて気温が上がり、海水が蒸発して水蒸気になると、降水量が増えるというだけでは
なく、気温もさらに上昇することになり、悪循環に陥るわけです。

海面温度の上昇は、台風の巨大化にも一役買っています。
また温度だけではなく水位もじわじわと上がり続けています。
温度上昇による海水膨張や大陸氷床の融解が原因ですね。

以前、科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載された論文によると、AI(人工知能)を
駆使して世界の陸地の標高データを修正したところ、台風の高潮や海面水位の上昇による洪水被害の
予測について、これまであまりにも過小評価されていたことが判ったそうです。
そしてその影響を最も大きく受けるのは、アジア諸国だと言います。
将来、沿岸地域の多くが水没してしまうかもしれないという、恐ろしい未来予想図が描かれていること
を、私たちも認識しておかなければならないでしょう。


By Admin|2023年8月18日|2023年,ニュースリリース|


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